シトシトと雨が降る日曜日
は駅前広場でデートの相手を待っていた
待ち人は「葉月珪」
2週間前の日曜に、葉月に電話をした
その時のことを思い出しては、頬を緩め、葉月が来る事を待っている

「あの、葉月くん、です」
「・・・ん、おまえか?」

「あ、あのね、再来週の日曜日って何か予定入ってる・・・?」
「・・・無いけど」

「それじゃ、あの、映画を一緒に観に行かない?」
「・・・・別に構わない」

「良かった・・・、それじゃ、映画は午後2時からだから」
「ああ・・・」

「んっと、午後1時に駅前広場で待ち合わせ・・でいい??」
「・・・・わかった、じゃ」

今までも、何度か電話をかけたことがある
でも、葉月は愛想も無く

「やめとく・・・」

そう言って電話を切られた事が2回

「予定・・・あるから、悪いけど」
そう言われたことが2回

学校で会っても、特別に話し掛けたり出来る訳でもなく
それでも、下校時に見かけると

「一緒に帰らない?」

勇気を出して、そう繰り返してきただった
そしてようやく、今日のデートにこぎ付けたのであった


ピンクのチューリップが描かれた可愛らしい傘をくるくると回す
雨は降り続いているけれど、の心は温かく
大好きな葉月を・・待っていた

時刻は午後0時50分
待ち合わせの時間まであと10分
心浮き立つの前に現れたのは、葉月とは似ても似つかぬ男だった

「ねえ君、ずっとここに居るよね?」

男はもちろん「ナンパ目的」で、は反対方向を向いて無視をした

「こんな雨の日に君みたいな可愛い子、こんなに待たせる彼氏なんてやめちゃってさ
俺とこれからデートって事で、ね?いいじゃん行こうぜ」
ナンパ男はの手をとって歩き出そうとした

「触らないでください!」
「何にも怖い事なんてしないよ〜、怒った顔も可愛いな〜」
ナンパ男はニヤリと笑いを引き寄せた

「や!やめてください!!」

悲鳴にも似たの声が辺りにひびく
そして、の腕を取っている「にやけた男」の腕を力強く引き払う
「もう一つの腕」が現れる
もう一つの腕の主は低くこもった声で

「汚い手どけろよ」とすごんだ

「あんだと?!」
「あんたじゃ役者が足りない・・・とっとと失せろ」

「・・きさま、何様のつもりだ!?」
「俺様・・・、早く行けよ、邪魔」

有無を言わさぬ物言いに、ナンパ男は汚い捨て台詞を口にして去って行った


「大丈夫か?・・遅かったのか・・俺」
「ううん、全然遅く無いよ!」

「・・・じゃ、映画・・・いくか」
「うん♪」


葉月とは、二人で並んで歩き出す
駅前広場から映画館まではゆっくり歩いて20分ほどの距離

映画館について、館内に入った二人
上映時間までは、まだ間があった
葉月はコーヒーベンダーで自分にモカを買い
にはココアを買う
二人はベンチに並んで腰をかけた

「これ・・・」
「あ、ありがとう、雨の中、結構寒かったから嬉しい」

はココアを受け取ると、両手で抱え嬉しそうに口に運んだ

・・・おまえ・・・、いつもあんなふうに・・?」
「あんなふうって・??」

「ナンパ・・・されてただろ」
「あ・・・、ん〜〜っと、殆ど無いよ」

「・・・たまにはあるって事?」
「まあ、ほんのたまに」

「・・・」

「でも、今日は、ちょっと早く着いちゃって
ずっとあそこに居たから、ナンパ目的に見えちゃったらしくて
4人に・・・声掛けられちゃった」

そう言うとは照れたように笑った

「・・・4人?!」
「あ、でも、みんな断ったから!」

「・・・早くって、何時に着いたんだ?」
「え・・・?あ、っと、内緒!」

「・・・何だそれ?」
「だって・・・葉月くんに呆れられちゃうから」

「・・・何時だ?」
「・・・」

「言えよ」
「・・・11時半」

「・・・・・約束1時だったよな?」
「うん・・・でも、葉月くんに会えるって思ったら・・嬉しくて」

「・・・、おまえってバカだ」
「そんな・・・」

「そんなに待ってたら、ナンパしてくれって言ってる様なもんだ」
「うぅ〜ん・・・・」


上映時間を知らせる館内アナウンスがあって、二人は座席に着いた
程なく予告が始まり、葉月の好きなSFXの本編が上映される
葉月の好きな映画は、もちろんが調べて選んだ物だった

2時間ほどの映画が終わり、エンドロールが銀幕に流れる
周りに居た客が少しずつ席を立ってゆき
葉月とは、最後まで座席に残っていた
周りに明かりが付いたところでが声をかけた

「葉月くん、楽しかったね」
「・・ああ」
「それじゃ、そろそろ行こうか?」

葉月は無言で立ち上がり、出口へと向かう
は相変わらず無口な葉月に寂しさを覚えながら、葉月の背中を見つめていた

と、出口まで来た所で、葉月が立ち止まり振り返った

「解かった・・・解決方法が」
「え・・・?何?」

「だから、解決方法」
「何?何か困った事でもあったの?」

「おまえがナンパされないようにする方法・・・」
「え・・?」

「今度から・・・俺がおまえの家に迎えに行くから
そうすれば、絶対に誰にもナンパされない・・・だろ?」
「う、うん。さすがに、家にいれば誰もナンパ出来ないと思うよ??」

「だから、おまえは家で俺が来るのを待ってろ」
「・・・・」

「俺が・・・行くから、な」

は葉月の言葉を噛みしめて、にっこり笑うと小さく頷いた

「葉月くん・・・、またデートしてくれるって事だよね?」
「・・・ん?」

「今度、家に迎えに来るって・・そういう意味だよね?」
「・・・・おまえ、放っておけないって解かったから」

葉月はそう言うと、ほんの少し頬を染めた


映画館から二人が外に出ると
さっきまでの雨は上がり、西の空に夕陽が輝いていた

「葉月くん、今度はどこに出かけようか?」
「・・・が行きたい所なら・・俺はどこでもいい」

人の目には見えない天使が、そっと二人の手をとった
そして、その「手と手」は重なってゆく
オレンジ色の光の中で、二人は新しい道を歩き始める

END


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